2015年5月31日日曜日

スマートフォンや携帯電話の使う電磁波の周波数について その2

「SAR測定法について」
 スマートフォンや携帯電話(ガラケーのことです)は最大送信電力800mWで電磁波を出し、この電力の一部が身体に吸収され、身体内で発熱します。この熱作用が身体に影響を与えないように、現在、電話器の出す電磁波の強度は、SARと呼ばれる身体組織が吸収する電力当量で規制を受けています。ICNIRP(国際非電離放射線防護委員会)の定めた側頭部とそれ以外の身体各部のSAR規制値は、4W/kgです。WHO(世界保健機関)や我が国の厚労省、総務省、環境省の規制値もこの値に従っています。
 SAR測定には人体模型を使い、実際にスイッチを入れたスマートフォンや携帯電話を使って電磁波を発放させ、人体が受ける電磁波の量を実測します。頭部の被曝を測定する時は、頭部を極端に単純化した頭部模型(モデル)を使います。モデルは写真に示す様に、成人の頭部の外形をした樹脂製の容器を前から見て鼻を通る線で2つに縦割りしたものです。これを耳を下にして切断面を上にして、内部に人体の誘電率と導電率を模した液体で満たします。耳のところに測定されるスマートフォンや携帯電話などを置き、動作させます。電話器の出す電磁波の強度は、写真にあるロボットアームの先に取り付けた電界測定のプローブを使って測定します。プローブを溶液の中に入れ、3次元的に細かく動かして格子状の点で電界を測り、この電界分布から3次元空間の電位分布を計算し、各点の電位差と溶液の抵抗値から消費電力量の分布を求めます。つまり頭部の発熱量分布が計算できることになります。この電力量を頭部の電磁波エネルギーの吸収量として算出し、SAR値とします。モデルや溶液、、電話器位置、測定方法は、細かく規定されており、H23に出された総務省の一部答申(http://www.soumu.go.jp/menu_news/s-news/01kiban16_02000025.html)や(http://www.soumu.go.jp/main_content/000133534.pdf)には測定方法がが具体的に示されています。なお、現在、側頭部の新たなSAR測定方法について諮問が行われており、報告はH27年7月を予定しています。
 携帯電話会社は、新型を発表するたびにSARの測定を行い、自社のホームページでこの値を公開して、ICNIRPの規制値以下であることを保証します。これは電話器の形が変わるごとに送信回路やアンテナの効率が変化し、電話器内部のアンテナの位置が変わるので、微妙に頭の中での発熱量の分布が異なるからです。

「SAR測定法の検証」
 さて、国際的に認証されているこの規制値と測定方法のセットは、果たして正しいのでしょうか。まず、人間の頭の中には意外に空洞が沢山有ります。鼻腔、発音中の口腔、耳穴、などは誘電率が1の空気で、この領域は絶縁物です。これ以外の脳組織や血管類は誘電率が80~90の良導体の領域です。外側の頭蓋骨は誘電率が約1000です。頭部がUHF帯の電磁波を浴びた場合、電磁波は誘電率の高い頭蓋骨に集まりますが、絶縁物なので、結局は脳の領域に浸透します。この場合、鼻腔、口腔、耳穴よりも誘電率の高い脳組織を電磁波が通り、ここで波長によって決まる特定部分の電流値が増え、その微細な部分の温度が上がるでしょう。ヒトの細胞は数度以下でも温度が上がれば、大きなダメージを受けるので、微細といえども注意すべきです。
 UHF帯の電磁波は波長が短いので、この集中する領域は1cm以下で温度上昇は数mm程度でしょう。従来の測定では、プローブを動かす幅が大きくて、細かな集中などを見逃していました。新しい測定方法では細かく測るようになるようですが、もう一つの重要な空洞や脳などの材質の差の要素を表現できないので、集中部分の温度上昇が把握できません。
 今後、頭部全体の電磁波分布を精確な3Dシミュレーションすることです。3Dの頭部モデルを作り、周波数ごとの電流分布と抵抗値の分布を3Dシミュレーションして精度の高い発熱量の分布を算出し、正しいSAR値の予測値とすることが正しい方法でしょう。より正確な計算のためには、頭の内部での熱伝導方程式を解く考えも有りますが、今のところは放熱が問題となるような電力量では無いので、発熱量計算だけでも十分な情報となるでしょぅ。
 この様に、内部に空洞が無い頭部模型に比べて、人体頭部の脳組織は、実質の体積は小さいため、体積あたりの被曝エネルギー量は大きくなります。さらに、複雑な3D構造に起因する電流集中部分は5倍程度に達するでしょう。従って現状のSAR測定法に対して、全く根拠が無い仮定ですが、局部的には10倍のエネルギー放出が有るのではないかと考えます。次回は、この様な電流集中が起きて、はたして携帯電話の電磁波は頭にどんな影響を与えているのか、説明をします。


SAR測定装置。下に有るのが人体頭部を縦割りした容器で、人体の誘電率と導電率を模した液体を満たします。手で示す電界測定装置の先端部をロボットアームで液体中に入れて、3次元で電界分布を測定します。(2003年にTELECを見学した時に、許可を得て撮影)

2015年5月16日土曜日

スマートフォンや携帯電話の使う周波数について、 その1

「スマートフォンの使う電磁波の周波数」
 スマートフォンや携帯電話(ここではいわゆるガラケーのことです)はどんな時に電磁波を出しているのでしょう。かつて、携帯電話は、電話と名が付く様に通話が目的でした。やがて、デジタル化と共に、メールの機能が加わりました。これが携帯電話(ガラケー)の基本機能ですが、これにインターネットに接続して、自分から音声やメールを送るよりも広く情報を受け取ることが重要になってきました。この様な通信内容の変化で、スマートフォンが生まれました。
 スマートフォンは、携帯電話の用途を通話とメールの通信から、情報端末へと大きく変えた物です。これに伴って、ユーザーインターフェース、つまり操作方法、を大きく進化させて指先で画面の情報に直接アクセスすることになりました。これは、昔むかし、スティーブジョブズがアップルやマックで目指したコンピューターを意識させない操作方法、に通じるところです。スマートフォンは、従来のガラケーがインターネットを使うのにPCを操作する知識が必要だったのに対して、コンピュータを意識せずにグーグルの助けを借りて世界中の情報を利用できます。
 スマートフォンや携帯電話はこの音声通信用と、インターネット接続などのデジタル通信では、使う周波数帯が異なります。通話の時は、話が途切れないように、電磁波の伝播特性が良い1GHz以下の帯域を主に使います。メールやインターネット接続は、途切れてもデータを再取得すれば済むので、1.5GHz以上の高い周波数帯の広く高速の帯域を使います。会話中に途切れるとすぐにばれますが、メールでは途切れても気付かないからです。これはスマートフォンでも従来の携帯電話でも同じです。

「スマートフォンの電磁波と頭の関係」
 通話する時は、普通は電話器を耳に当てて使いますが、この時に電話器の出す電磁波の影響がなが年にわたって、論じられています。携帯電話を使うことが脳腫瘍などの原因となるか否かは、約20年前から、つまり携帯電話が世に出た時から問題とされていました。これは同じUHF周波数帯域の2.45GHzの電磁波を使った電子レンジがすでに実用化されており、一般にもこの周波数帯の電磁波の危険性は認識されていたからです。それにもかかわらず、なぜこの周波数帯を携帯電話は使ったのでしょう。
 ひとつは、無線通信の機器は低い周波数の方が作りやすく、かつ遠距離通信が可能なので、低い周波数帯を使うのが利に適います。携帯電話の始まる1980年代では300MHzまでのVHF帯はほ満杯でした。残されていたUHF帯は、たまたま携帯電話の用途に適した周波数でした。7.5cm程度の小型アンテナで済み、かつ都市内のビルかげでも回り込んで不感地帯がすくない、と言う利点を持ちます。限られた周波数帯を使うので、多数のユーザーが使えるように遠くまで電波が飛ばないように、むしろ出力を絞ってあります。800MHzから2.5GHzの周波数帯は携帯電話用として絶好の周波数帯だったのです。
 しかし、この周波数帯の電磁波の波長は、たまたま身体の頭や手足等の身体組織のサイズに近いため、身体組織は電磁波に共振して電磁波エネルギーを吸収しやすいのです。スマートフォンや携帯電話の送信電力は最大800mWで、この電力の一部が身体に吸収され、身体内や表面で発熱します。この熱作用が身体に影響を与えないように、現在、これ等の通信機器の出す電磁波は、SAR Specific Absorption Rateと呼ばれる身体組織が吸収する電力当量で規制を受けています。この方法では、電磁波の持つ信号成分は無視して、身体内で起こる電磁波エネルギーの発熱効果だけで評価をしています。次回はSARとは何なのかを説明します。